九度山人さんのツーリングレポートを読んでいて、始めての道、前に走った道、色々な思いに耽りながら皆んな走っているんだなぁと思った。
たとえ日帰りでも自転車でちょっとした旅行にでかけると云う事は、車や鉄道などの他の交通機関を利用するのと違って非常に密度の高い体験や感動を得られる事が多い、確かに行動範囲も限られるし制約も多い、端的に云えば「しんどい」のであるが、多かれ少なかれ、そんな「しんどい」と思われている様なツーリングを長い事続けている。
この自転車と云うある意味不自由な乗り物は、外界から隔離された移動する為だけの空間になってしまった自動車や列車と違い、空気や音や匂いを100%近く感じる事ができ、目的地に着く事よりもそのブロセスを大切にできる貴重な乗り物である、オートバイですら速度と引き換えにその騒音で聞こえるだろう「音」を失っている。
趣味の世界の中では決してメジャーと云えない自転車の中でも、多くの人が短絡的に自転車→スポーツ→競技と考え、メーカーも多くのショップがその様な方向を向いている中で、ツーリングと云う分野は極めてマイナーな趣味になってしまっていて、どちらかと云うと「変人」の範疇に入っているらしい。 別に人に「趣味」を押しつけるつもりはないが、少なくとも私たちは多くの人が得た事のない快感の中を折りにつけ走っている事に、秘かな優越感を感じていたりする。
「健康的で良いですね」と云われると「まあ」としか答えられない、別に「健康」の為に走っているつもりもない、結果的に「健康」だとは思うけど。
「レースに出たりするんですか」と問われると、この人の尺度はこうなんだなと思ってしまう、所詮は交通手段なのだから早く走る事に技術的研鑚を積む事は必要だろうが、そんな事は「趣味」の範疇ではないし、山道を転げ落ちる事だけに特化してしまったマウンデンバイクは既に自転車ではなくなっている。 「スポーツですから」と云われれば私はスポーツしているつもりもない、やはり変人なんだなぁ。