サイクルトレイン運行社会実験

 今日は奈良県の主催する表記のイベントに参加してきました。桜井線の天理駅から和歌山線五条駅まで団体列車を仕立てて往復すると云うもので、事前の申し込みが必要で、参加資格は奈良県在住または県下に就労就学していると云う事なのですが。
 集合はJR桜井線と近鉄の乗り入れる天理駅前、列車には途中で乗り降りできませんので、逆戻りする事になりますが、桜井から10キロ程を走って行く事になります。
 久しぶりの延陽伯号の出動ですが、参加者の大半は今風のロードバイク、マッドガード付きのいわゆるラ系の自転車は皆無です、時代と云いますか参加申し込みの車種の欄にも選択肢は「その他」です、まぁ延陽伯号はモデル名こそスポルティーフのシリーズ名「グロワール」ですが、24吋ですからミニベロの範疇になるかと、しかしミニベロ(小径車)の選択肢もありませんでした。まぁ道交法普通自転車であれば参加できる訳でして、婦人用実用車や子供用での参加者もおられます、輪行の難しいリカンベントの参加者でもいれば面白かったのですが。なお奈良県ではタンデムの公道走行は認められていません(記事投稿当時)
 定員は80名だったのですが、抽選どころか定員にも達せず追加申し込みも受け付けていたもののやはり定員には達しなかった様で、3両編成での運行となっています。私の周りでもこのイベントを知らない人が殆どで周知不足と云うか宣伝不足、この辺りからも県のやる気の中途半端さ、結果ではなく何かやってれば良いと云うお役所仕事感が感じ取れます。
 1時間に1往復程度のローカル線桜井線ですが、天理駅は奈良駅が先年リニューアルされるまでは唯一の高架駅、ホーム2面4線を持つ桜井線で一番立派な駅なのです。
 県外の方には想像しにくいかも知れませんが、天理教の団体に対応するために広い団体待合室があり、ホームも実質的に専用になっていて団体待合室から階段ではなくスロープで上がる事ができます、即ち自転車を推したままゾロゾロと。私も教団関係者ではないので利用させて貰うのは初めてですが、サイクルトレインの出発駅としてはお誂え向き、駅前広場の一角には最近スポーツサイクルを扱う某店もオープン、天理大学があるだけに若い人も多く衰退一方の県内の他の街と比べて生き生きとしていて羨ましい限りです。
 主催の県は日本旅行と某コンサル会社に運営を丸投げしている様ですが、運用社会実験とは云え参加料2,000円は往復運賃+保険料程度の金額、JRの対応などを見ていると県は幾ら出しているのでしょうね。
 さてスタッフの挨拶、注意事項などの説明の後、ホームへ上がりますが、8時半から9時までの受付の後、1002の出発は些か長すぎますね。
 車両は勇退間近の103系3両編成があてがわれていました。車内ではつり革との固定用にベルトが支給されます、これも実験の一環かと、ただベルトが無意味に長すぎるので難渋します、実験以前の課題でしょ。五条駅までは1時間数十分、運転停車以外はノンストップですから、この季節にトイレなし車両は些か辛いですね、これだけ時間に余裕があっても発車間際にトイレへ往復する御仁がいるのは、子供かい。
  何しろ単線の桜井線と和歌山線ですから幾つもの運転停車(行き違い交換)をこなして、無事に1115五条駅1番ホームに到着、臨時出入口から外へ。この後、上中級者向けと称するサポート付きのサイクリングも用意されているのですが、日頃走っている吉野川沿いのルートを走っても面白くありませんので、自由行動とさせて貰います。
 時間も時間ですのでまずはお昼を、駅西の踏切を渡り金剛山への道を辿ります。
 お目当ては五條市田園のニュータウンの中にあるとんかつ屋さん「おうちのとんかつ屋」、とんかつ定食1,050円也、なかなか肉厚のロースに★4つ進呈。
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 スカッと爽やかなお天気でしたら賀名生あたりまで往復しても良かったのですが、降られてもかなわないので近場をウロウロする事に。五條代官所長屋門の前に保存されている78675(8620形式)、五條とは縁も所縁もなさそうな8620ですが、この車、最後は和歌山機関区所属、東和歌山駅(現在のJR和歌山駅)や紀伊田辺駅の構内入れ替へに出張っていたC50は記憶にあるのですが、恐らくこちらは現在の大和二見駅から分岐していた川端貨物支線に来ていたものかと。その川端支線とは、五條と云えば未成線の五新線が良く知られているのですが、正真正銘の廃線跡があるのです。
 現在の大和二見駅、ここから川端支線が分岐していました。話は和歌山線の前身、関西鉄道、南和鉄道にまで遡るのですが、その辺りの事はwikiでもご覧になって下さい。
 廃線跡は概ね道路として残っています、写真右は国道24号線との交差部分。
  1982年まで使われていただけにいまも遺構が残っています、支線は木材や鉱石を積み込むヤードのあった吉野川河畔の川端駅へ続いていました。その先は日本初とも云われる索道、大和索道があって、高野町富貴や旧大塔村阪本、後年は野迫川村の紫園へと繋がっていたのです。ちなみに現存する最古のロープウェイは吉野山、但し現在運休中。
 おなじみ五條新町へ戻ってきました、こちらは五新線の遺構、吉野川に橋が架かる事はなく、城戸までの路盤を引き継いだバスもこの高架区間を利用する事はなかったのです。近年国道24号線を跨いでいた橋も撤去されてしまいました。
 まだまだ時間がありますので五條新町の「ゆるり」で温かいおぜんざいを頂きます。サイクルトレイン参加者の姿も見かけたのですが、お店のスタッフはサイクルトレインの運行は知らない様で、五条駅でもガイドマップは配られていたものの市職員の方の姿は見かけなかった様な。天理は駅前のコンビニ位にしかお金が落ちないでしょうに、五條にとって多少なりともプラスなイベントになっていたかと思うのですが。
 帰りの集合時刻が1515なので戻ってきたのですが、発車は1612と帰りも待ち時間が長すぎます、最近のローディが纏うウェアと云ったら走り続けている事を前提にしていますから、天理駅の様に屋内の待合室がない五条駅、屋外で1時間も待たせるのは酷な話です。幸い今日はそれ程寒くないのですが、先週の様な風の強い日だと待つ方はたまらないですよね。
 通常五条駅では上り列車は地下道を挟んだ2,3番線から発車するのですが、下り列車の出発を待ってサイクルトレインの車両が1番ホームへ入線します。復路はゴムのコードで同じくつり革に固定しますが、こちらは伸縮するだけに揺れて扱いにくいです。往復の車内では参加者全員にアンケートの記入を求められます。
 出発前から何やら鉄ちゃんの姿が目立つなぁと思っていたら、103系の定期運用がなくなりつつあるのと、大和高田以南への運用が珍しい様です、私には通勤用の103系には何の魅力も感じないのですが、もう40年以上も走り続けてきたんですね。
 写真は吉野口駅にて、隣を近鉄の「青の交響曲」が颯爽と出発して行きました。
 帰りは運転停車の時間が長く、2時間近くかかってすっかり暗くなった天理駅へ戻ってきました。天理駅でも向かいの一般用ホームには鉄ちゃんたちのカメラの砲列が、昨今はホームでの三脚は御法度やないんですね。
 18時には解散となります。真っ暗な上街道を桜井へ、結局は本日の走行は桜井~天理の往復も含めて40キロに届かず、とんかつ定食とぜんざい、その他に暇な車内でお菓子を、摂取カロリー>消費カロリーなサイクリングの一日でした。

 さて折角参加させて頂いたのですから、私なりの検証を。参加者を奈良県民および就労者他に限った意味は? これだけの時間の余裕とスタッフを用意しているなら、社会実験と云えるだけのサンプル数(参加者)を集めて、起こりうる問題点を洗い出すべきだったのでわ、定員割れは参加者が少なかったねだけで済む問題ではなく、企画した側の甘さ、努力不足なのでは。車内での固定方法については設備や予算の事もありますが、あまりにも素人考え過ぎるのではなかったのか、ベルトの長さ位は使い勝手を事前に検証しておくのは可能だったはず。
 話を戻して「サイクルトレイン」を今回の様な貸し切りのイベント列車にするのと、時間帯や曜日、利用可能駅の制限があっても、近江鉄道や一畑電鉄の様な常に利用できる「サイクルトレイン」とするのかで自ずから課題になる点は変わってきます。前者の様な形態ならば奈良県内に限るとルートも参加者も限られてきます、今回の桜井線~和歌山線ならせめて奈良市、桜井市、橿原市、大和高田市内の何れかの駅からの乗車下車の可能性を考えではなくては。観光客やハイカーならぬサイクリストの県下への誘致と云う事になれば、大阪や京都と云った大都市圏からのアクセスを考える必要がある、JRなんばから五条や桜井などは考えられるが、やはり奈良県では近鉄の参画なしに話は成り立たないと思う、上本町・布施~大和八木・榛原、あべの橋~吉野なんて「サイクルトレイン」があれば在阪のサイクリストにはそれなりの需要があるかと。加えてこの様な「サイクルトレイン」の場合は、移動の車中の時間を活用して五條市の案内や紹介があっても良かったかも知れない、確かに細長い複数の車両でどうするのかと云う問題もありますが。
 後者の場合、和歌山線なら土日休の朝の下りと夕方の上りだけでも、新聞輸送の様に車両の一部を仕切って自転車用とするなんて事が考えられないものでしょうか、当然、定員や料金と云った課題がおのずと見える訳で、輪行マナーですら取り沙汰される昨今ですから、想定外のトラブルもあるかも知れません。またスポーツサイクルだけを対象にせずとも、一畑電鉄などでは買い物の足としての利用もうたっている訳です、都市部ではコミュニティサイクルの利用促進が叫ばれる中、地方ではサイクルトレインの活用がもっと検討が進んで良いはずです、社会実験とは予算と人を掛けてイベントを行えば良いと云う事ではなく、そう云った試行錯誤にトライする事では。従来から奈良県の自転車への施策は「ならくる」の様に利用者のニーズを充分に汲まずに机上のプランを並べ、結果潤ったのは標識を立てる業者とコンサル会社、そして作りっぱなし。京奈和自転車道では単年度ではないものの13億のも予算がついています、ビンボー人の私は大した税金を納めている訳でもないが、サイクリストを出汁に税金で使えない自転車道をお役人と業者の為に作るのは堪忍してほしいものであると、手慣れたあしらいの日本旅行のバイトのお嬢さんと、コンサル会社のバイト君たちを見ながら思った「サイクルトレイン運用社会実験」の一日でした。

 

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「サイクルトレイン運行社会実験」への1件のフィードバック

  1. ごもっともなご意見だと思います。
    大阪や京都から繋がればサイクリストがドッと奈良に流れ込むかも知れませんね。
    ならくるも奈良公園くらいから明日香まで全部繋がればコレまた観光資源になりそうです。
    多くの河川が縦に流れるフラットな奈良盆地は名所旧跡もいっぱい。初心者にも最適な環境だと思います。
    サイクルトレインとならくるの整備が整えば楽しいですね。(笑)

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