「砂の女」

仕事でパソコンの前に長く座っているいるとさすがに肩などの痛みが酷くなってくる、だったらBlogも控えたらと云われそうだが、仕事だと集中力が続かなくってネ(^_^;)
 横になるとずっと楽になるので寝てしまえば良いのに目が冴えていけない、で久しぶりにビデオなんぞを引っ張りだして見ていたら、結局最後まで見てしまった。
 「砂の女」 岸田今日子と岡田英次が主演した勅使河原宏監督の1964年の白黒作品で、同年のキネマ旬報ベストテンで小林正樹監督の「怪談」を押さえて第1位に輝き、「飢餓海峡」が第5位となっている。 そしてカンヌでは審査員特別賞を受賞している。 さすがにロードショーは見ていないが、名画座か何かで映画館のスクリーンでも見た事がある。 余談だが「怪談」は岸恵子ファンの母親に連れられて見ている「黒髪」が怖かった事を鮮烈に覚えている、正直今見ても「リング」より怖い?。
 原作はもちろん安部公房、私の最も好きな作家である、「砂の女」は安部公房の作品の中で最も一般受けする作品なのかも知れないが、映画も同じ勅使河原宏監督の「他人の顔」程の難解さはなく、何よりも背景も背景だが白黒映画の美しさをこれ程感じさせる映画は数少ない、武満徹の音楽(ミュージック・コンクレート)も素晴らしい。 原作に忠実な作品で安部公房作品の一貫したテーマである「存在証明」、岸田今日子演ずる「女」と「村」の関係、そしてその構造に取り込まれてしまった主人公、そして最後の「溜水装置」の研究に希望を見いだす主人公と彼の「失踪宣告」が感動的に表現されている。 何度見ても新鮮で感動的だ、ただ原作に忠実と書いたが安部公房作品に一貫して流れるテーマの様なものはいささか希薄になっている様に思える。 しかしもうこんな日本映画って作られる事はないのかななぁと、つくづく思ってしまう、安部公房作品を4本映画化した勅使河原宏監督はその晩年「利久」「豪姫」を監督するが、安部公房作品で再びメガホンをとる事なく4年前に亡くなってしまった、後年の安部公房作品「箱男」なんぞを映画化してほしかった。


PS:なおロードショー時は147分の作品だっがカンヌ出品時に124分に編集された。 現在ではDVDで147分版も見る事ができ、断続的にカットされた部分は決して冗長になっていた訳ではなく「能登の御陣所太鼓」のシーンを始め各所で非常に作品の内容を色濃く表現している。

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